最高裁昭和51年3月16日道路交通法違反、公務執行妨害被告事件をわかりやすく解説

刑事訴訟法

道路交通法違反、公務執行妨害被告事件

被告人は、酒酔い状態で運転中に交通事故を起こし、その後警察の取り調べ中に暴力を振るいました。具体的には、呼気検査を求められた際に、警察官の制服を引っ張り、肩章を引きちぎり、顔面を殴打するという暴行を加え、警察官の職務執行を妨害しました。

このケースは、公務執行妨害罪が成立するための条件、特に公務の執行が適法であることの重要性を強調しています。また、道路交通法違反という刑事罰の対象となる行為に対する警察官の介入が、法に基づく適切な職務行為であることを示しています。

法的争点

このケースにおける主要な法的争点は以下の通りです:

  1. 道路交通法違反:被告人が酒酔い状態で自動車を運転した行為が道路交通法違反に該当するか。
  2. 公務執行妨害罪の成立:被告人が警察官の職務執行を妨害した行為が公務執行妨害罪に該当するか、特に警察官の行為が合法的な公務の執行であったかどうか。

最高裁判所の判断

最高裁判所は、以下のように判断しました:

  • 道路交通法違反について:被告人の酒酔い運転は道路交通法違反に該当すると認定しました。日本の道路交通法は、酒酔い運転を厳しく禁じており、これに違反した場合は刑事罰の対象となります。
  • 公務執行妨害罪の成立について:被告人の警察官に対する暴行は、公務執行妨害罪に該当すると判断しました。この点で重要なのは、警察官の行為が合法的な公務の執行であったかどうかです。最高裁は、警察官が道路交通法に基づき呼気検査を実施しようとしたこと、および被告人を警察署に連行したことは、適法な職務執行の範囲内であると認定しました。

判決の理由

  • 弁護人の上告趣意の棄却:弁護人の上告は、事実誤認や法令違反の主張に基づくものであり、刑訴法405条に定められた上告理由に該当しないとされました。
  • 公務執行妨害罪の適用:被告人の行為は、公務執行妨害罪の成立要件を満たしており、原判決における公務執行妨害罪の成立の認定は正当であると裁判所は判断しました。
  • 適法性の判断:警察官の行為は、必要性、緊急性を考慮した上で、任意捜査の範囲内で許容される行為として評価されました。被告人の反抗的な振る舞いに対する警察官の対応は、適法であり、過度な強制手段には当たらないと裁判所は判断しました。

法的意義

この裁判例は、道路交通法違反に関連する公務執行妨害のケースにおいて、警察官の職務執行の適法性を確認した点で重要です。また、酒酔い運転に対する厳格な対応と、公務執行妨害行為への断固たる態度を示した判例として、後の類似事件における判断の指標となりました。

 

引用・参考元:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/825/051825_hanrei.pdf